都市の大聖堂―ゴシック建築と都市の発展について  その1 大聖堂の成り立ち

雑記・建築旅

【はじめに】
 近代の建築史に入る前に、ヨーロッパにおいて近代への発展のもととなった中世の建築を取り上げたいと思います。この時代の建築は、その後の様式にも大きな影響を与えただけでなく、人の流入と都市の発展にも寄与してきた、ダイナミックなものであり、とても魅力的に感じます。
 今後、都市の建築、とりわけ中世ヨーロッパの大聖堂建築を中心として、その構造的な要素やそれを作り上げた職人の生活にも視点をあてて、その魅力をご紹介していきたいと思います。
(引用・出典)
 三省堂 『三省堂図解ライブラリー 中世の大聖堂』
 学芸出版社 『図説 建築の歴史―西洋・日本・近代』

【背景】
 12世紀の中頃、都市が大きく発展すると、建築の中心舞台は都市へと移りました。中でも力をつけつつあったパリを中心とするフランスでは、国王の後ろ盾を得て、都市に建つ一般民衆のための宗教施設―大聖堂が次々と建てられていきました。それらはそれまでのロマネスクとは全く異なった、光に満ちた、圧倒的な高さを誇る全く新しい様式の建築でした。

パリのノートルダム大聖堂外観
(フランス 1163~1250年頃)
(写真:LIFULL HOME’S PRESS より)

【大聖堂の成り立ち】(出典・引用:三省堂図解ライブラリー 『中世の大聖堂』)
 (この図のもととなっているのは、12世紀から13世紀はじめにかけてつくられた、フランスのシャルトルの大聖堂です)

 大聖堂の平面の基本的なしくみは、ローマ時代にできあがったものが中世にもほぼそのままうけつがれました。司教や聖職者たちがミサをとり行う祭壇とうしろにいちだん高くなった司教の玉座、そのまわりの聖職者たちのための場所―これはのちに「クワイア(内陣)」と呼ばれるようになります―が聖堂の東側を占め、西側には、一般の人々が参列したり、聖職者たちが行列をつくって行進したりするための場所である身廊がありました(このような形式を「バジリカ」と呼びます)。
それに成人の遺品や聖処女マリアをまつる祭壇などをおさめるチャペル(礼拝所)、鐘を吊るすための塔や尖塔などが付け加わって、中世の大聖堂ができあがります。またヨーロッパの大聖堂の多くには修道院が付属しており、司教の宮殿もすぐ近くに建てられました。

1.側廊 
 身廊の両わきにある廊下(「側廊」asileは、語源的には「翼部」wingを意味しました)。
2.アーケード 
 身廊と側廊を隔てる柱に支えられたアーチの列です。
3.バットレス(控え壁) 
 石でできた支えの壁で、屋根などの重みで壁が外側に崩れたりしないように止めるもの。
4.鐘楼
 鐘を吊るすための塔。
5.高窓
 身廊のアーケードで支えられた壁やそこに開けられた窓の列をさします。聖堂内にできるだけたくさんの光を取り入れるよう、工夫されました。
6.クワイア(内陣)
 大聖堂のなかでいちばん神聖な場所。祭壇のまわりにあり、大聖堂につかえる聖職者たちがおつとめのあいだここに立って、お祈りの言葉をとなえたり、聖歌をうたったりしました。
7.フライング・バットレス(飛び控え壁)
 地上数十メートルの高さの壁を効果的に支えられるように、アーチの形にした華奢で優美なバットレスです。
8.基礎
 地面より数メートル下にこしらえられた丈夫な石の壇。地盤がやわらかいときには、この下に何本もの杭がうちこまれていました。
9.身廊
 大聖堂の「胴体」にあたり、おつとめのとき信者たちがそこに立ったり、ひざまづいたりしましたが、このほか、まちの人々の集会やさまざまな催しにも用いられました。
10.玄関がまえ
 聖堂の西正面入口(エルサレムの方角に向かい合っている)は信者たちに「神の家」であることを印象づけるための重要な場所でした。ここには様々な彫刻で、キリストや聖書の中の物語が表されていました。
11.屋根
 鉛の板やときにはスレート、瓦などを使用し、木造の小屋組みの上にはりつけたもの。
12.バラ窓
 大きな円形の窓であざやかな模様のガラスをはめ込んであります。バラ窓は永遠性を象徴するものでありました。
13.尖塔
 高くたちあがり先がとがった構造物で、塔の上などに設けられました。尖塔は木造で、こけら板と呼ばれるものなどを貼りました。尖塔の上にしばしば金色の風見や十字架などが取り付けられました。
14.翼廊
 身廊から直角に両側に張り出した部分で、通常は身廊と内陣とのつなぎ目のところから出ています。このため聖堂全体としては平面が十字架の形となります。翼廊には、はじめ助司祭たちのための祭壇が置かれましたが、のちには聖者をまつるチャペル(礼拝所)を置いたり、身分の高い信者のための場所となりました。
15.ヴォールト
 アーチ状になった石造の天井。信者たちがいる場所から上を見上げるとこれが見えます。初期の大聖堂は木造天井が多かったが、火災の心配や音響効果などを考えて、石造のヴォールト天井がつくられるようになりました。



今回は、大聖堂の建築的な仕組みを理解するため、おおまかな大聖堂の作り、成り立ちを図解にて示してみました。

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